たった一つの噛み合わせ

正しい位置は一つしかない

一般的の調整方法とその限界」のページでも解説しましたように、「噛み合わせの正しい位置」がわからなければ、どうやって治療をしたら良いかもわからず、患者様の感覚に頼らざるを得なくなってしまうのもうなずける話です。

綺麗な歯 しかし実際には、理論的に「噛み合わせの正しい位置」というものが存在します。 この位置を知るための作業を、難しい言葉でいうと『重心移動咬合をとる』と言い、それによって把握された「噛み合わせの正しい位置」を『重心咬合位』 と言います。この重心移動咬合自体は決して特殊な理論ではなく、歯科医ならば誰もが知っている「カンペル平面」というものが基準になっています。

難しい話は別にして、ここで何よりも重要なことは、その人にとってベストな噛み合わせの位置が、たった1ヵ所しか存在しないということです。

唯一ベストな噛み合わせの位置があるということは、本来は『経験や勘』などに頼る必要がないということです。治療もずいぶんと楽になるでしょう。しかし、それでも『経験や勘』に頼らなくてはならない理由はどこにあるのでしょうか?そこには大きく3つの理由があります。

これまでの治療が「経験と勘」に頼らざるを得ない3つの理由

理由 1 : 正しい位置が分からない


まずは、「ベストな位置」は理論的には分かっていても、実際の口を目の前にしたとき、いったいそれがどんな位置なのかは、目で見ただけでは分からないということです。その位置を知るには当然のことならが測定するための手段が必要になりますが、この測定方法がこれまで無かったため、「なんとなく目で見て勘で決める」という感覚的なものになってしまっています。

理由 2 : どうすれば正しい位置になるか分からない


仮にベストな位置が分かったとしても、どこをどう調整すればその位置になるのかわからなければ、適切な治療はできません。噛み合わせの調整は非常にシビアで、口の中の一箇所を調整しただけで、他の複数の箇所が影響を受けます。つまり、噛みあわせの調整をするには、あらかじめ「こう調整したら、全体でこうなる」というシミュレーションが必要不可欠になります。しかし測定する手段すら無い状態で、シミュレーションする方法があるはずもありません。やはりここでも「たぶんここをこうすればこうなるだろう」という「勘」に頼って治療を行うしか方法がないのです。

理由 3 : 患者さんの感覚とのズレ


もし仮に、正しい位置に調整できたとしても、さらにもう一つ超えなければならないハードルがあります。それは患者さんが時折感じる「違和感」です。実は、噛みあわせ治療で最も難しいのは、正しい位置に噛み合せ調整しても、患者さんがダイレクトに「良くなった」と感じられない場合があることです。

治療を進めていく上で、患者さんの感覚は各種検査による測定結果と同じぐらい大切なものです。ですから、しっかりと皆さんのお話を伺い、それを治療に反映させていきます。ただし、過度に患者さんの感覚だけに頼ってしまうと、思いのほか治療が難しくなることもあります。

実は、こうした感覚の違いがでる理由は簡単です。まず、噛み合わせの位置そのものは、歯を削ったり、スプリントと呼ばれるマウスピースのようなものを装着することで、物理的に「すぐに」変えることができます。しかし、人間の下あごは頭蓋骨と「筋肉」でつながっており、この「筋肉」はすぐに強くしたり弱くすることはできません。

噛み合わせがずれていると、ほとんどの場合、顎を支える筋肉に過度の力がかかっているところと、本来もっと力がかかるべきなのに、弱くなっているところがあります。筋肉は強い力を与えれば少しずつ強くなり、力をかけなけらば少しずつ弱くなっていきます。つまり、噛み合わせは筋肉主導なので、筋肉の状態で噛み合わせが変化します。 仮に噛みあわせが物理的に正しい位置にあったとしても、それまでと筋肉の使い方が変わってくるため、しばらくは違和感が残るのは当然のことなのです。

しかし、この事実に気づかず、患者さんの感覚だけに頼って治療をしてしまうと、何度も何度も噛み合わせの位置を修正することになってしまいます。正しく測定ができていれば、筋肉の状態が変わるのをしばらく見守って、再度確認することもできますが、患者さんの感覚だけに頼ってしまうと、右往左往した治療になってしまいます。

繰り返しますが、患者さんの感覚はとても重要なデータのひとつです。ここで大切なのは、患者さんの感覚と客観的な測定データとを綿密に照らし合わせ、そのズレの原因をしっかり把握すること。噛み合わせ治療は、こうした患者さんとのコミュニケーションと高い測定技術によって、はじめて成功します。

OBCによる治療

OBCの写真 さて、私たちの治療では、すでに何度かご説明しているように、科学的な測定方法を用いた噛み合わせ治療を行っています。測定にはOBCとよばれる「患者さんひとりひとりに合わせた測定器具」を製作します。

人間の顎の動きはとても複雑なため、一律の測定器具では正しい顎の動きを把握することはできません。OBCは患者さんごとに一つずつ作られるので、これによって正しい噛み合わせの位置を把握できるのはもちろん、「どう調整すれば、どうなるのか?」といったシミュレーションも可能になり、より科学的で患者さんにも負担の少ない治療が可能になっています。治療の詳細について詳しくは、左メニューの「治療の流れ」をぜひご覧下さい。